伝えたいことを映画にすると、話のプロになれる

「うまく話したつもりなのに、なぜか伝わっていない気がする」。プレゼンや日常の会話で、そんな風に感じたことはありませんか?

実は伝える力は、特別な才能ではなく、あとから身につけられるスキルです。そのポイントは、自分の気持ちをそのまま伝えることではなく、相手と“情景”を共有すること、たったこれだけです。

つまり、『言葉で情景を作り、映画のワンシーンのように届ける』これができれば、あなたは話のプロになれます。

伝えたいことがあるだけでいい

スティーブ・ジョブズのプレゼンが多くの人の心に刺さったのは、話し方がうまかったから・・・という一言で片付けるのは間違った認識であり、何度も繰り返し練習し、念入りな準備が行われていたといわれています。

またソニーの創業者・盛田昭夫も、「ソニーのことを話すのに原稿なんていらない」と語られていたように、好きなこと、大切にしていることは、自然に口から出てくるはずです。

一方で、「話すことがないけど、うまく話さなきゃ」と思っても、なかなか伝わらないものです。うまく話すよりも先に、「話したい」と思えるテーマを持つこと。それが、心に届く話の第一歩です。

感情ではなく、情景を伝える

「楽しかった」「感動した」といった感想を伝えることは悪いことではありません。しかしそれだけでは聞き手の心まで届かないこともあります。なぜなら、人は感情そのものよりも、その感情が生まれた背景や情景を通して、共感するからです。

たとえば、「インドの宗教イベントで、360度どこを見ても人だらけだった」と聞くと、そのすごさがイメージできますよね。あるいは、「テネシー州の女子刑務所で、体育館の真ん中に2脚だけ椅子が置いてあって、静かで、冷たい風が肌に当たるような空気だった」という描写があれば、その場の空気まで感じられます。

五感を使って描写することで、聞き手もその場にいるような気持ちになれます。その結果、「ああ、わかる」と感情が自然に伝わっていくんです。

数こなせばうまくなる

アメリカでは、子どもが幼稚園に通う頃から「Show and Tell(ショー・アンド・テル)」という発表の時間があって、自分のお気に入りのものを持ってきて話す練習をします。大人になっても「トーストマスターズ」といったスピーチ練習の場があり、日常的に“話す力”を磨いている人がたくさんいます。

それに比べると、日本では話す練習をする文化があまり根づいていないかもしれません。だからこそ、「うまく話せる人=特別な人」と思われがち。でも本当は、話す力は誰でも練習で伸ばせるスキルなんです。

自転車の乗り方と同じで、最初はぎこちなくても、少しずつ慣れていくうちに自分の言葉でしっかり話せるようになります。伝え方は“選ばれた人”のものではなく、誰にでも開かれている力なんです。

「話す」という行為は、自分の思いを相手に届けること。でも、そのときに大事なのは、「こんな気持ちなんです!」と押しつけることではなく、「こんな場面だったんですよ」と一緒に情景を見てもらうことです。

気持ちは情景にのせることで、はじめて相手の中に届きます。そして、その情景をできるだけ具体的に、五感を使って描写することで、より深い共感が生まれます。

「うまく話す」よりも、「伝えたいことがある」「届けたい思いがある」という気持ちが先。その思いを、相手の心に届くように丁寧に描写していくこと。話し方を磨くことは、誰かとわかり合い、心を通わせていくための大切な手段なんです。

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